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娘の本棚の一角に、小さいときから集めた小さな縫ぐるみや人形が住んでいる。 その中心には、いつもペコちゃんが笑顔で立っている。 何年か前、東京渋谷の目立たないビルにある不二家レストランで買ったものだ。 娘が日本へ行けるのは、せいぜい1年か2年に一度。なぜか到着して最初のランチに不二家へ行きたがる。 そういえば、僕が子供のころも不二家は大のお気に入りだった。 今はエクセル東急ができてなくなったが、渋谷駅の銀座線と井の頭線が終点で向かい合うガード下に店舗があった。 昭和30年代の終盤、僕が小学校に上がる前には、もうあったことを覚えている。 ショーケースにはたくさんのカラフルなケーキが並び、定番のショートケーキとシュークリームは高級品で、好物というより憧れだった。 母が買ったハート型のパイを一枚もらって初めて食べたとき、香ばしい美味しさに病み付きになった。 幼稚園に入るころから小学1年の1学期まで、東京の家を改築するので埼玉の上福岡団地に住んでいた。そこから母に連れられて、世田谷の祖母の家を訪ねる帰り道、母は必ず渋谷の不二家に寄ってパイを買ってくれた。 上福岡から世田谷に引越す日、団地の近所の仲良しが見送ってくれた。そのとき、僕の片手には、不二家のパイが入った透明とピンクの袋が握られていた。あとでゆっくり食べようと、大切に取っておいた。 僕と友達が「バイバイ」と手を振って分かれるとき、なぜか母が「これ、あげなさい」と僕からパイをもぎ取って渡してしまった。あっという間の出来事だった。 不二家というと、なぜかあのときの悔しさが思い出される。 きっと、ハート型のパイは、いまも同じ味なんだろうな。 不二家が立ち直るには大変な労力を要するだろう。 だけど、ペコちゃんは悪くないんだよ。 応援しています。
by bob_jones
| 2007-03-23 14:23
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