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土曜の朝、ハンは6時に家を出てハノイ市内のバスターミナルに向かった。 今から行けば、きっと昼頃には国境に着けるだろう。 荷物は小さなバッグに簡単な着替えを入れただけだった。もしかしたら向こうで宿泊するかもしれない、そんな予感もあった。 中国南部とハノイを結ぶ道路は整備され、バスは順調に走った。そして、正午を少し回ったところで終点の国境、ドンダンに到着した。 初めて訪れた国境は、中国から来た貨物がたくさん積み上げられていて、ハノイへ向かうベトナムのトラックに作業員たちがせっせと積み込んでいた。 ハンがそんな光景を、珍しそうに眺めていると、うしろから「ハンさん」と声をかけられた。アインだった。 アインは非番だと言ったのに軍の制服を着ていた。彼によると、午前中は臨時の勤務についていたそうだ。 20分ぐらいかけて、アインはハンに国境の様子を説明した。軍の任務は、中国軍の侵入を防ぐことが第一で、次に不法侵入者や密輸の防止も行っているという。危険を感じるようなことは滅多になく、最近では北朝鮮からの脱北者を、アインの所属する部隊が捕まえたのが大きな事件だと言う。 ハンは、そんなアインが頼もしく思えた。これまで付き合ったことのある男にはない、祖国を守る正義感と責任感を備えているように感じた。やはり最初の印象通り、ちょっとオカマっぽいけれど。 アインが「長旅でお腹がすいたでしょう。近くにいいレストランがあるから行きましょう」と言った。 先日の、グエンとの事があったので、ハンは国境の施設にある手洗いにいって、今日は絶対に失敗しないと心に誓った。もちろんアインは、そんなハンの心の内を知る由もなく笑顔で待っていた。 アインもグエンと同じように、古いホンダのバイクで来ていた。ハンは小さな手荷物を後部にくくり付けると、アインの後ろに座った。 二人乗りの前にいるのが、オリーブ色の軍服を着た男性と言うのは初めての経験で、ちょっと違和感もあったが、ベトナム人として誇らしくもあった。 15分ほどで国道に面したレストランに到着した。 昼どきで、けっこう客が入っていた。ベトナム語に交じって中国語も聞こえてきた。仲買人やトラックの運転手など、雑多な人種が入り混じるのが国境だと、アインが教えてくれた。 ハノイにはないからと、アインが中国産のビールを頼んだ。田舎では、非番になれば、軍服を着たまま飲酒してもお咎めはないという。ハノイではこうはいかないらしい。 料理も中国風で、聞けば食堂のオーナーは広州から来た中国人だそうだ。支払いも、中国元、ベトナムドン、どちらでも大丈夫という。 ハンはビールを数杯飲んだとき、トイレの場所を確認しておけばよかったと後悔したが、幸いなことに尿意を感じることなく過ごすことが出来た。 食後に中国茶が運ばれてきた。香ばしく美味しいお茶だった。 アインが「ちょっと失礼」と言って立ち上がった。 手洗いに行くようだった。 ハンはハノイの友達と携帯でメッセージのやり取りをしてアインを待った。 友だちは、ハンが国境にいると知って驚いていた。 しばらくたってもアインは戻ってこなかった。 お腹の調子でも悪いのかしらと、ハンはあまり気にしなかったが、ちょっと長すぎる気がした。 お店の女の子に訊くと、手洗いは店の裏手にあるという。 まさか先日のような粗末なトイレじゃないだろうと思って、ハンも用足しに行くことにした。 ここもやはり郊外型の木板を使った安作りで、調理場の横を通って更に進むとトイレがあるらしかった。 しかし、ハンの視界に入ってくるのは、見渡す限りの野っぱらで、ススキや雑草が生い茂るばかりだった。 アインはどこにいるのかしらと、粗末な渡り廊下の最後まで来たハンであった。 「アイン、アイン、どこにいるの?だいじょうぶ?」 ハンはどこにいるとも知れぬアインに向かって呼びかけた。 そして、右手の方でガサガサと草がすれ合う音がした方を見ると、ハンは目を大きく見開いたまま、その場に硬直してしまった。 「ア、アイン・・・、どうしてそんなところで・・・」 ハンの耳には、アインが「アイ~ン、アイ~ン」と歌っているように聞こえた。 そして不幸なハンは、泣きながらバスターミナルに走った。 【完】 (友人提供)
by bob_jones
| 2009-10-06 18:33
| アルチュー人生
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